私の元に絵がやってきたのは、8年前だったと思います。

スタッフの方から、お話をいただいた時は、「今まで人の絵なんて興味ないし、別にいらないや」と思っていたのです。

しかし、いざ絵と会ってみると、自分の魂が揺さぶられる感覚に戸惑いました。

経験したことの無い感動です。

 

そして、静寂の中に絵と私とスタッフの方の魂の会話があるようで、日常では音がない生活などあり得ないのに、時が進むのが早く感じられました。

別れの時、そろそろ家に帰る時間になったので、立ち上がろうとしたら、体に違和感が・・・。

絵が「帰らないで」と私の手を引っぱっているように感じました。

 

いろいろな不思議な出来事を体験して、私は、絵と一緒に暮らすことを選びました。

その時に迷いはありませんでした。

この絵が、これから私をいろいろな所に連れていってくれる気がしたからです。

 

それから、私の手元に「Paire」が来た日、いつか「Paire」と行きたい場所がありました。

初夏の休日、車を走らせ北へ向かいました。

ひすい色の日本海を「Paire」に見せたいと思ったのです。

家を出て4時間、目的地に着きました。

天気は快晴で、海はキラキラと輝いていました。

「Paire」に海をみせてあげました。ただ、1時間ほど何もせず海を見ていました。

ふと、「Paire」とみてみると、絵の左上の方の内側がうっすら水滴がついていました。

美しい海の調べに彼女は涙を浮かべたのです。

連れてきてよかった。この旅で「Paire」との絆が深まったのです。

 

 

仕事で大きな事故を起こしてしたこともありました。

髪や眉毛やまつ毛まで焼け、ひどい姿になって、家に帰ったとき「Paire」はそっと、傍らに寄り添ってくれました。

幸いに顔には深い跡は残らず、大事には至りませんでした。

あんなにひどい姿だったのに。どこかで「Paire」に守られた気がしました。

その頃、私は悩んでいました。

親元にいることで依存している様な居心地の悪さを感じていたのです。「一人で生活しよう。「Paire」、私を新しい場所に連れていって下さい。」と願いました。

願いは叶いました。大家さんもいい方で、住むのに良いところです。

 

(T.Sさん)